Aug 17th, 2017

ELLE 掲載:数値で判明!“理想の女子像”が若者を抑圧する日本の実情

Elle Graph

ELLE Onlineに、弊社プランニング・ディレクターの大橋が執筆した記事が掲載されました。JWTが行なった世界の女性意識調査の結果から、日本の若い女性の閉塞感の現状を読み解きます。http://www.elle.co.jp/…/fea…/hopeless_japanese_women170728/1

数値で判明! “理想の女子像”が若者を抑圧する日本の実情

「女尊男卑だ!」と言われるまで力をもったと言われる日本人女性。それって本当? 世界最大の広告会社グループWPPの中核企業、ジェイ・ウォルター・トンプソンが世界中で実施した調査でわかったのは、一元的な“あるべき女性の生き方”像が、若い女性達の閉塞感を生み出している日本の現状。そんな“不都合な真実”を同社ディレクターの大橋久美子さんが解析!

今を「女性にとってよい時代」とは思えない日本女性たち

テクノロジーによる女性の連帯が進み、今までタブーとされてきた女性の性・性器・ムダ毛・生理なども「ノーマライゼーション」=「恥ずかしがる必要はない自然なこと」としてオープン化されている世界の女性たち。 広告の世界でも、北米において、女性たちが商品化されてきたことに対するアンチテーゼを打ち出す“#WomenNotObject”というプロジェクトが立ち上がり、先見性のある広告主はいち早く対応するなど、女性を取巻く環境は大きく変化してきています。グローバル平均73%、アジア太平洋地域で80%以上の女性たちが「今ほど女性にとってよい時代はないと思う」と女性であることを肯定的に評価しているのも当然のことです。

ところが、この楽観的なムードと対照的に、日本女性の「今ほど女性にとってよい時代はないと思う」への賛同率はたった43%。他のアジア圏と比べても女性の現状に対して悲観的に捉えている女性が多いという結果となっています。さらに注目すべきなのは、これを年齢別に見てみると、もっとも賛同率が低いのが18~29歳の36%、逆に最も高いのは、50代の50%であることです。ここから20代女性の閉塞感が見て取れます。50代は男女雇用均等法(1986年施行)第一世代であり、家に縛られていた女性たちが外に出て働く自由を得た世代だということを思い起こせば、この世代の女性たちが、最も女性であることにポジティブでいられるというのも納得できるわけですが、 全体としては“女性が輝く社会”などとは言えない日本の現状が浮かび上がっています。

成功への自信も低い日本の女性たち

このような閉塞感を表すのが、成功への自信の度合いを調査した際、日本人女性が出した数値の低さです。この調査の中での成功とはあくまでも自分の定義としての成功であって、決して経済的な豊かさや仕事での成功を意味しているわけではないのですが、漠然とであっても「自分は成功するのが難しい」と考える、自己肯定感が低い女性たちが日本には多いといえます。   そして、その成功の自信がより低いのが学生であり(もう成功している+自信がある=33%)、最も高いのが専業主婦(=64%)なのです。

ちなみに、自分にとっての成功の定義という点では、「健康」「幸せ」「良好な家族関係」「元気な子供を育てる」といった要素が上がっていて、日本の傾向もグローバル全体のものとほとんど違いはありません。つまり、各国ともに女性が成功と考えるのはウェルビーイング的な要素(心身の健やかさ・豊かさ)であり、昇進や金銭ではなかったのです。(ただし、そのウェルビーイング要素の中においては、英米豪伊の女性は「愛されること」が、アジアでは「健康」が成功と答えているのは興味深いと言えますが……)。   どうやらこの部分を掘り下げても日本女性の成功への自信のなさを解く鍵は見つけられなさそう。そこで注目したのが、25歳~34歳における「人生のプライオリティー」というデータです。

“あるべきライフコース”が夫&出産に一元化

 「クォーターライフクライシス」という言葉を最近耳にするようになりました。20代後半~30代の人たちが自分の夢の追求と結婚・出産という、次のステージへのタイムリミットが迫る中で陥る葛藤のことを言います。ネットワークが発達した現代だからこそ、SNSでの友人の充実っぷりが焦燥感をあおり、体力の衰えの実感が不安を加速させるのです(女性の多くは20代後半から筋力・ホルモン量が低下し始めるため)。   欧米では、多様なライフコースの可能性があるにも関わらず卵子老化という体内時計が待ってくれないことが葛藤要因のようですが、日本においては状況は異なります。 

「25~34歳における人生のプライオリティ」の回答を見てみると、日本においては“出産・育児” と“パートナー”が突出して高いということがわかります。キャリアやお金を稼ぐこと、家を所有すること、起業すること……クォーターライフ世代にはまだまだいろんなプライオリティがあるはずなのに、日本女性にとっては“パートナー”と“出産・育児”こそがこの時期の最重要課題であり、それ以外のことは付帯的なことに過ぎないという価値観がここには表れているようです。   つまり、今の女性たちは多様なライフコースが選択できる時代に生きているなどと言われている巷の言説とは異なり、そして、確かにいろんなライフコースの人がいるのも事実であるけれど、そんな現実とは別に“あるべき女性の生き方”は一元的になり、それがクォーターライフ世代のプレッシャーとなっていることが浮かび上がっているのです。

 “あるべきライフコース”をたどれない自分への葛藤

 さらに問題なのは、世の中の価値基準はそうだとしても、彼女たちは「自分は子供を作る予定はない・わからない」と考えているということ。その理由も、山口智子的な意志のある「子のない人生」の選択ではなく、漠然として消極的なものしか上がっていません(他国では、キャリアのため・やりたいことがあるからと言った理由が挙がっているが、日本ではパートナーがいないから、または経済的な理由が挙げられています)。

専業主婦が贅沢な選択となり出産後も働き続けることが必然となっているにも関わらず、長時間労働を強いられる男性主導の職場労働環境と、変わらず妻偏重の家事労働環境のギャップの中で、両立を果たせるのはスーパーウーマンだけ。自分はああはなれないと思うと子供が欲しいとは思えない……。結果、“あるべきライフコース”がどんどん遠のいていく。

データが示唆しているのは、自分さえも望んでいない“女性はこう生きなきゃいけない”といったルールに自分を照らし合わせ、そこに向かっていけない自分を否定するという悪循環のループにはまっている女性達の現状です。働き方も男女意識もこのままではいけないのは間違いないけれど、葛藤や自信のなさを抱えている若い女性は一度立ち止まって考えてみる必要があります。あるべき基準に自分をあてはめて、自分を責める必要なんてない。“こうでなきゃ”というルールから一度自由になって、自分が生きたい生き方を考えることから、日本の女性が本当に輝く社会は始まるのだと思います。


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